これも全部、私を信用させるための手口だとわかっている。

でも松岡くんは私と、本当の彼氏になりたいと願っていた。
子供ができて三人で動物園に行きたいと言っていた。

それは――私も、同じだった。

「騙すなら、もっと上手に騙してよ……。
この家が欲しいならあげたってかまわない。
殺したいのなら嘘だってわかんないように殺して。
私は……私は……」

――こんなにも松岡くんを愛していた。



目を開けるとカーテンの隙間は少し、明るくなっていた。

「もうすぐ朝……」

デジタルメモはいつの間にか、電源が落ちている。
キーの上に手をのせたまま、眠っていたみたいだ。

「まだ頑張れる、から……」

再びキーに手をのせ、猛然と叩き出す。

昨日まで書いていた、完成間近の例の小説は破棄した。