ちょんちょん、立川さんの長い人差し指が私の唇をつつく。

「え?」

「そのときが最高にロマンチックだよね」

「は、はい……」

立川さんがにっこりと笑い、私はとうとうオーバーヒートしてあたまから湯気がふしゅーっと吹き上がった。



立川さんが手を振って帰り、玄関に鍵をかける。
が、松岡くんには予備の鍵を預けてあるから意味がない。

「鍵、変えないと……」

業者を呼んで交換してもらうのは面倒くさいが、これはそんな場合じゃないのだ。

「家政夫の解約もしないと……」

なんでこう、いろいろと面倒なのだろう。
そもそも、家政夫なんて頼んだのが間違いだったのだ。

「にゃー」