横井さんはあまり信じていないのか、あの日のように耳をほじっていた。
もしかして松岡くんから懐柔でもされているのだろうか。
ついてきた女性警官も注意すればいいのに、挨拶したっきりずっと黙って後ろに座っているだけだし。

「とにかく松岡くんが犯人なので!
よろしくお願いします!」

「はぁ。
わかりました」

どこまでもやる気のない横井さんにイライラする。
やっぱり私は馬鹿にされているんだろうか。

「それで。
……そちらは、どちらさんで?」

立川さんの方へあごをしゃくり、横井さんはにたぁっと笑った。

「大藤先生の担当をしております、蒼海出版編集の立川です」

横井さんの横柄な態度と反対に、立川さんは礼儀正しくあたまを下げた。

「へぇ。
編集さんねー。
それで、なんで編集さんがここに?」