「台車から助けたあの日から、あなたが忘れられなかった。
桃谷の紹介でまた会ったとき、これは運命だと思いましたよ」

じっと、彼は私を見つめている。

「僕は――あなたが、好きなんです」

躊躇いがちに背中へ回った手が、私を抱きしめる。
ドキドキと速い心臓の音は私のもの?
それとも――立川さんの?

「……紅夏、って呼んでいい、かな」

その問いに私は――ただ、頷いた。



そのあと、連絡した横井さんは若い女性警官を連れてすぐに来てくれた。

「あのお兄さんが犯人、ですか……?」

全部、松岡くんがやったことだと説明した。
けれど横井さんは釈然としていないようだ。

「一応、お兄さんからも事情を聞いてみますわー」