結局、本を開いてみたものの、ちっとも集中できなかった。


今日の夕食はラタトゥイユとカレー味のグリルチキン、それにほうれん草のスープだった。
食べる前に携帯で写真を撮っている私を、松岡さんがちらりとだけ見た。

「いただきます」

相変わらず、彼の作る料理は一流シェフが作るもののようにおいしい。

「ラタトゥイユは多めに作りました。
チーズをのせて冷蔵庫に入れてありますので、明日はそれをトースターで焼いてお召し上がりください。
グリルチキンもパンに挟んでおいておきますので」

「ありがとうございます」

この一ヶ月で私の食生活は劇的に変化した。
よくてコンビニ弁当、悪いと徳用菓子パン袋とコーヒー牛乳の生活をしていたのに、週二日のまともな食事に、さらに作り置きまでしてくれる。

夕食が終わると私に食後のお茶を出して松岡さんは片付けをする。