けれど、執事服の男が猫を捕まえていたとなれば、松岡くんで間違いないだろう。
日常的に執事服を着ている人なんて、彼くらいしか思い浮かばない。

「いままであれ、全部演技だったのかな……」

私が好きだ、本当の彼氏になりたいなんて言っていたあれが、嘘だとは思いたくない。

でももしかしたら彼は私が初恋もまだな処女をいいことに、だましていたのかもしれない。

だいたい、ひきこもりでゴミ屋敷に近いような家に住んでいて、処女なのにエロ小説書いているような女、誰が好きになる?

……あ、自分で卑下しておいてさらに落ち込んできた。

「そうだよ、私を好きになる人なんているわけがない」

初めて可愛いとか言ってもらえて、甘やかせてくれたから勘違いしただけ。
きっと彼もそうやればだまされるってわかっていたから。

「……最低」

あんなに舞い上がってしまっていた自分が、哀れに思えてくる。