「そんな……」

ない、と言いきりたいのに、弱った心がそうさせない。
早く犯人を見つけて、安心したいから。

「とにかく彼、気をつけた方がいいですよ」

意味深に立川さんが頷く。
私の心は――完全に、疑心暗鬼になっていた。


「じゃあ、僕はこれで。
執筆、頑張ってください」

「……はい」

立川さんが帰り、中へ戻る。

「今日はなんの話をしてたんだ?」

茶の間で片付けをしていた松岡くんが聞いてくるけれど、うまく答えられない。

「相変わらず、松岡くんが猫を捕まえるところを見た、だよ」

嘘はついていない、その話をしていた。
ほかにも情報はついていたけれど。