私には松岡くんがいる。
横井さんだって動いてくれているって言っていた。

だから、大丈夫。
きっと、大丈夫。

言い聞かせたけれど、それでも不安がなくなるわけじゃない。
無理をするとまた松岡くんに怒られるのがわかっていなが ら、デジタルメモを立ち上げた。

……私は嫌がらせ犯になんて屈しない。
私は、私の小説を書く。

一度深呼吸して、キーの上に手を置く。
そのままなにもかも忘れるように、一心不乱にキーを叩きはじめた。



「紅夏!」

「……!」

手を掴まれて動きが止まる。

「ただいま」