あの事件はまだ、犯人は捕まっていない。
ほかの作家に嫌がらせをしていた犯人だって。
だったら、今回だって。

「紅夏!」

松岡くんが大きな声を出し、びくっと身体が大きく震えた。

「俺が」

彼の手が私の顔を挟む。
上からじっと見つめられ、私も見つめ返した。

「俺が絶対に、紅夏を守る。
絶対に、絶対にだ。
だから、安心していい」

少しだけ潤んだ、泣き出しそうな瞳が私を見ている。
それを見ていると力が抜けた。

「……うん」

私がようやく小さく頷き、松岡くんは親指で私の目尻を拭った。

「今日はもう寝ろ」

「うん、そうする……」