「今日はここに泊まる。
こんな紅夏、ひとりにしておけない」

松岡くんの言っていることが理解できない。

「でも業務規定違反、だよね」

「そうだな」

「バレたら会社、クビになっちゃう」

「そのときは紅夏専属の執事にしてもらうからいい」

笑った彼が、ぷにっと私の頬を摘まむ。

「……痛い」

「ん、ちょっと笑ったな」

私の頬から手を離し、なぜか松岡くんは私のあたまをがしがし撫でた。

「ちょっとの間ひとりにするけど、大丈夫な?
すぐに戻ってくるから」

「……うん」

「じゃあ、行ってくる」