「……にか。
紅夏!」

「……え?」

松岡くんから肩を揺すられ、我に返った。
私いま、なにを考えていたんだろう……?

「いまはなにも考えるな。
いいな?」

「う、うん」

強く言い聞かせるように言われ、仕方なく頷いた。
松岡くんはテレビをつけてリモコンを私に握らせ、台所へ行ってしまった。

「にゃー」

入れ替わるようにセバスチャンがやってきて、私の身体の隙間にずぼっとあたまを突っ込んでくる。

「セバスチャン」

膝の上にのせてあたまを撫でると、気持ちよさそうにのどを鳴らす。
なぜかそれだけで、わけもわからず涙が溢れてくる。