私を安心させるようにか、あたまをぽんぽんして松岡くんは台所へ消えていった。
少しして、カップを手に戻ってくる。

「落ち着くから」

「……うん」

渡されたカップを受け取った手は細かく震えていた。
こぼさないように気をつけながら、淹れてくれた紅茶を飲む。

「あれはセバスチャンじゃない。
セバスチャンはここにいる。
……わかるな?」

セバスチャンはいま、私の視線の先にいる。
あの足はセバスチャンのじゃない。

じゃああの足はどこの猫の?

やっぱり、セバスチャンのじゃ。

ううん、セバスチャンはここにいる。
だから違う。

だけど――。