ちゅっと頬に唇が触れ、しばらく見つめあう。
この時間がたまらなく幸せで――同時に、淋しい。

「じゃあ」

「うん、じゃあ」

玄関が閉まり、自転車の音が聞こえなくなるまでそこにいた。

「明日も、来るんだし」

自分に言い聞かせて中に戻る。

「にゃー」

「んー、セバスチャン、どーしたのー」

さっきまで松岡くんにもらったおやつをがっついていたくせに、私の姿を認めてセバスチャンが寄ってきた。

「遊ぼうか」

「にゃっ」

お気に入りのネズミのおもちゃを手に取るとセバスチャンの目の色が変わる。