「じゃあ……こっち」

チキンのトマト煮込みを自分の方へ引き寄せる。

「ん。
じゃあ、いただきます」

「いただきます」

一口大に切られていた鶏肉を、がぶり。

「……!」

鶏はただの鶏とは思えないほどジューシーぷりぷりで、トマトの酸味がよくあっている。
たぶん、いままで食べてきた中で一番美味しい。

「な、うまいだろ?」

なんで松岡くんが得意げなのかわからないが、ぶんぶんと何度も頷いた。

「ここ、俺が一番うまいと思ってる店なの。
この店超えたくて頑張ってきたけど、いまだに超えられねーんだよなー」

松岡くんが料理上手な理由がよくわかる。
こんなお店を目標にしていたら、そりゃ上手くなるよ。