「左手だけでなんとかならないかな……」

試しに、左手だけで入力してみる。
両手ならブラインドタッチできるのに、片手になるといちいちキーを確認しないといけない。

「ううっ、面倒……」

面倒、だけどこれでやるしかないのだ。
右手は封印してぽちぽちとおぼつかない手つきでキーを打ちはじめた。



「こんばんはー」

「はーい」

土曜日、夜少し遅い時間に松岡くんはやってきた。

「ごめんな、こんな遅い時間に。
これ、ケーキの差し入れ」

「ありがとう!」

差し出されたケーキの箱を受け取る。
松岡くんは気が利くなー。