ちゃんと考えてくれているんだ。
そんなの、嬉しくなっちゃうよ。

「指、絶対無理するなよ」

「わかった」

ちゅっ、松岡くんの唇が触れたのは……私の頬、だった。

「じゃあ、また明日。
おやすみ、紅夏」

「おやすみ」

笑って松岡くんは帰っていく。
いなくなって唇の触れた頬をそっと押さえた。

もう少しだけ、我慢してね。
ほんとにあとちょっと、だから――。


仕事部屋でデジタルメモを開き、キーの上に指をのせてみる。
軽く入力してみたが、人差し指と中指はかなり使う。

「無理、させられないし。
腐って切断とかなったら困るし……」

わかっている、が早くあれを書いてしまいたい。