セバスチャンも松岡くんの言葉、わかっているのかな?

「あっ、こら!」

結局、セバスチャンは松岡くんの手を抜け出して家の奥に消えていった。

「あー、もー、せっかくいい雰囲気だったのにー」

松岡くんはがっかりしているけど、私は――ほっとしていた。

「もうすぐメシ、できるから」

「うん」

私のあたまをぽんぽんして松岡くんは台所へ戻っていった。
またこたつに潜り直して……はぁーっ、聞こえないようにため息をつく。

別に、仮彼氏を卒業したくないわけじゃない。
けれど……やっぱり私はまだ、自分に自信がなかった。

松岡くんは励ましてくれたけど、私は嫌がらせを受けるような小説を書いているのには変わりない。

でもきっと、あの小説が書き上がったら、世間から認められる。
そしたら大手を振って松岡くんに告白できる。