長い人差し指が、まるで壊れ物にでも触れるかのように、慎重に唇に触れた。

「……」

じっと黙ったまま、松岡くんを見上げる。
どくん、どくん、とさっきから、自分の心臓の音しか聞こえない。

「……いいか」

「……」

黙って見つめたままの私を肯定ととったのか、ゆっくりと彼の顔が近づいてくる。

――ああ、これで仮彼氏卒業なんだ。

私も目を閉じた……が。

――もふっ。

……ん?
もふっ?
なんか、もしょもしょする……?

目を開けた私の視界に見えたのは……真っ黒な、毛玉。