さっきから松岡くん、少し早口なんだけど……。
もしかして、照れている?

「きっとさ、紅夏の本読んでる人、みんな同じだと思うよ?
紅夏の本、面白いって。
もっと書いてほしいって思ってる」

ちゅっ、また松岡くんの唇が私の頬に触れた。

「そりゃさ、世間の人全員が紅夏の本、面白いかって言えばそうじゃないさ。
嫌いって人だっているし、もしかしたら好きって人よりそっちの方が多いかもしれない」

ゆっくりと松岡くんの手が、自分の方へ私を向かせる。

「でも紅夏はそんな奴気にしないで、紅夏の小説が好きだって人に向けて、書けばいい。
みんな、紅夏の小説が好きで好きで待ってるんだから、その人たちのために書けばいい。
俺は、そう思う」

ティッシュで涙を拭ってくれる手がくすぐったい。
松岡くんは笑っていて、私も自然と笑っていた。

「ありがとう」