――書きたく、ない。

「俺、さ。
紅夏の小説、全部読んだ」

思わずびくんと、肩が跳ねる。

「紅夏があれだけ頑張って書いてるのが、どんなのか気になった。
んで、恥ずかしかったけど本屋で買って読んだ」

私をあやすようにか、松岡くんは顔を前に回して頬に口付けを落とした。

「なんかこう、……すっげーキラキラしてた。
うん、キラキラしてんだよ。
あと、わくわくもした。
なんでさっさと告白しねーんだよ、とかいらいらしながら読んで、んで、結ばれたらよかったなって他人のことなのに喜んだ」

初めて聞く、生の読者の声はこう……恥ずかしすぎる!!
おかげで涙は引っ込んだし。

「とにかくこう、すっげー面白かったの。
だから読み終わった次の日、また本屋に行って並んでる紅夏の本、あるだけ全部買った。
それくらい、面白かった」