躊躇いがちに松岡くんが声をかけてくれた。

「どうした?」

後ろから松岡くんはそっと、私を抱きしめた。
おかげで耐えきれなくなって涙がぽろりと落ちる。

「私の、小説が、不快な人が、いるん、だよ、ね」

「いるかもな」

自分で言っておいて肯定されると、心臓にナイフがずぶりと刺さった。

「私、は、小説、なんか、書いてちゃ、いけない、の、かな」

「そんなことない」

「だって、私、が、書いた、しょ、小説、で、嫌な思い、する、人がいる、なら。
も、もう、書かない、ほうが、いい」

「それは俺が困る」

さっきから松岡くんはなにを言っているのだろう。
書いても否定されて、こんな思いをするならば、もう書かない方がいい。