「セバスチャン、お留守番よろしくねー」

「にゃー」

見送りに出てきたセバスチャンが、任せとけと鳴いた。


手を繋いで近所のスーパーまでの道を歩く。
たまにすれ違う女性は、必ず松岡くんを振り返った。

今回だけじゃない、前も、警察に行ったときもそうだった。

銀縁眼鏡にオールバックで長身の男が、さらにナポレオン調長コートを着ていたら格好いいのはわかる。
私だって絶対、振り返っちゃうだろうし。

でも……なんか、ムッとする。

「ん?」

松岡くんの腕を抱くようにして私がぴったりと身体をくっつけ、彼は不思議そうに私を見下ろした。

「どうかしたのか?」

「……どうもしない」