「……俺が紅夏を殺させない」

そっと松岡くんの手が頬に触れ、まっすぐに私を見つめる。

「やっぱりこんなときに、意地張ってる場合じゃないよな」

彼が私の右手を掴み、持ち上げる。

「今日の郵便、俺が開ければよかった。
……作家の指にこんな、傷」

まるで慈しむようにちゅっと口付けを落とされた。
それだけで指先の痛みが止まる。
いまなら私の気持ちを聞いてもらえそうで口を開いた。

「あのね、そのね、立川さんはただの理想の王子様で、それで、ずっと王子様を夢見てきたから憧れで、でもただそれだけで、立川さんはきっといなくなっても、あーあ、いなくなっちゃった、残念だなーって思うだけで、でも松岡くんがいなくなったら私、悲しくて悲しくて生きていけなくなると思うの。
だから、その」

纏まりのない言葉が一気に溢れ出ていく。
話しても話しても、うまく伝わっているか自信がない。

「うん、わかった」

ぼすっといきなり、松岡くんに抱きしめられた。