「いや、お勧めしなかったのは悪かったんですが、たぶん締め切りに間に合わないだろうと思っていまして。
でもこの分だと十分間に合いそうなので」

蒼海文芸大賞といえばプロアマ問わず応募ができる、文芸界では大きな公募だ。
入賞作は書店で大々的に売り出され、映像化された作品も少なくない。
そんな公募に私の作品を出す?

「でも、私なんて」

いままで書いてきたのはTLノベルで文芸は未知の分野。
あんなに立川さんとプロットを詰めたにもかかわらず、まだ手探り状態で書いている。

「大丈夫です。
僕が保証します。
それに桃谷だってきっといい作品になると言っていたじゃないですか」

「それは、そうですが……」

自信が全くない。
そもそも、私なんかが書いたものを出していいのかすらわからない。