「……うん。
ごめん。
すぐに準備するから待っててもらって」

「はい」

松岡くんがいなくなり、みるみる期待は萎んでいく。

「……着替えよ」

顔を洗って適当な服に着替え、化粧をする。
最近は楽しくなってきていた化粧だけれど、いまは億劫で仕方ない。
最後に、これだけは忘れずに、松岡くんからもらったペンダントをつけた。

「お待たせしました……」

「すみません、お忙しいのに押しかけてきて」

「いえ……」

茶の間で立川さんはお茶を飲んでいた。
曖昧な笑顔でその前に座る。
彼はすぐに、紙袋を差し出してきた。

「これ。
いま、世間で話題のチーズタルトです。
まさか、一時間も並ぶなんて思いませんでしたよ」