松岡くんのひとり言は続いていく。

「紅夏がそんな器用なこと、できないのはわかってるんだけど。
でもな……」

髪を撫でていた手が離れていく。
その手はあらわになっているであろう、首筋の噛み痕を撫でた。

「こんな印つけとかないと、不安でしょうがない。
余裕なくて紅夏を追い詰めてる俺、格好悪ー」

ふふっ、自嘲するかのような小さな笑い声が耳に届いた。

「おやすみ、紅夏。
夢の中じゃ、泣かずにすんだらいいな」

頬に柔らかいものが触れ、離れていく。
それが酷く悲しくてまた涙がこぼれた。


「立川様がお見えになっておりますが」

「はいっ!?」

松岡くんの声で目が覚めた。
また、彼が来る時間を過ぎても寝ていたようだ。

――けれど。