「では本日はこれで失礼させていただきます」

ぴしゃっと、拒絶するように玄関が閉まる。
結局、今日は謝るどころかまともに会話すらしてくれなかった。

「そんなに怒んなくてもいいじゃない……」

ひとりになると、涙がぽろぽろこぼれ落ちてくる。

「……いい。
仕事するから」

手のひらで涙を拭いながら仕事部屋に向かう。
デジタルメモを立ち上げ、つらいことをすべて忘れるようにキーを叩きはじめた。



ゴン、額が机に激突する。

「ヤバい、寝てた……」

五分で自動オフの設定になっているデジタルメモの画面は、真っ暗になっていた。

「でも、あとちょっと……」

これが書き上がれば松岡くんと仲直りできる。