「すぐに夕食の準備をいたします。
少々お待ちください」

「よろしくお願いします」

松岡さんが台所に消えていき、私ももう仕事をする気になれずにテレビをつけた。

「よろしければどうぞ」

視界の隅をなにかが横切った気がして顔を上げる。
レンズ越しに松岡さんと目があった。

「あ、ありがとう……ございます」

「いえ」

ふっ、と薄く笑って松岡さんが離れる。
どきどきと速い心臓の鼓動を落ち着けようと、置かれたグラスに刺さっているストローを咥えた。

……び、びっくりしたー。

松岡さんの顔が思いのほか、近くにあった。
吐息さえもかかってしまいそうな距離で。
男性とあんなに顔を近づけたことがない私としては、動揺しないわけがない。