「ありが、とう」

私の目の前に郵便の束を置いて、松岡くんはさっさと台所へ行ってしまった。
確認しないでもすでに、例の茶封筒がのぞいている。
嫌だな、と思いつつ、封を切った。
今日は金曜日でエスカレートする日だから。

中から出てきたのはやはり私の本だった。

――ただし今度は、無数の釘が打ち付けてある。

「ひぃっ」

悲鳴とともに本は下に落ちた。
それはワラ人形を連想させて、背筋を悪寒が駆け抜けていく。

「気持ち悪い」

私が怖がっていても、松岡くんは台所から出てこない。
こんなおぞましいものを送りつけられたことよりも、そっちの方が私を悲しくさせた。

台所へフリーザーパックを取りに行く。
棚をごそごそやっている私を、松岡くんはちらっとだけ見た。
けれど声はかけてくれない。

無言で茶の間に戻り、今日の郵便を詰める。