素っ気なくそれだけ言い、松岡くんは引き続きアイロンをかけていた。

「あ、うん。
……おはよう」

「私は買い物に行って参ります」

アイロンがけが終わったのかてきぱきと片付け、松岡くんは部屋を出て行く。

「あの、ね」

なにか言わなきゃ、袖を引いて引き留めたものの声が出ない。

「……なにか」

上から、見下ろされた。
その銀縁眼鏡と同じくらい冷たいまなざしに、身体が竦む。

「……なんでも、ない」

袖を掴む私の手を振り払うかのように、松岡くんは買い物に出て行った。

「……まだ怒ってるんだ」

俯いたまま洗面所に向かい、顔を洗う。