やっとあのレビューがなくなるのだというのに、なんの感慨もない。
きっとこんな状況じゃなきゃ、手放しで喜べたのに。

『大藤先生、なんだか暗いですね。
なにかあったんですか』

「別に……」

立川さんの声が心配そうになる。
けれど彼のせいで松岡くんと喧嘩しました、なんて言えるはずがない。

『そうだ、嫌がらせがこれで解決するんです。
お祝いに食事にでも行きませんか』

「いえ……いいです……」

この状態で立川さんと食事になんか行ったりしたら、また松岡くんを怒らせる。
それだけはいくら鈍い私でもわかる。

『ほんとにどうかしたんですか』

私を気遣ってくれる彼には申し訳ないが、こればっかりは説明できない。