けれどここは祖母が最愛の人と過ごした想い出の家なのだ。

当然、私は反対して父と大喧嘩になった。
しかし部屋に籠城し、父と全く口をきかないなど意固地になっていたらとうとう父が折れた。

そして私が住むことを条件に、家の存続が認められている。

「戻りました」

しみじみと祖母との思い出を思いだしていたところに松岡さんが帰ってきて、びくんと背中が震える。

「お、おかえりなさい……」

振り返るとエコバッグを提げた松岡さんが目に入ってきた。

百歩譲って趣味の執事服は認めるとする。
エコバッグもいまは環境問題なんかあるし、お店によっては袋が有料のところもあるからわかる。
でも、その組み合わせはどうかと思うんですが……。
しかもエコバッグが猫柄、とか。

「どうかいたしましたか」

「……なんでもないです」

松岡さんは怪訝そうだけど、私には突っ込む勇気はない。