あいている手が私のあごを持ち上げ、ふっと耳に息を吹きかけられた。
途端に背筋をぞわぞわと波が駆け抜けていく。

「なに、さっきの?
恋する乙女みたいな顔をして」

私はそんな顔をしていたのだろうか。
でも立川さんは理想の王子様なんだから仕方ない。

「あいつはあんたを大事にしてるみたいだし?
さぞかしいい気分だろうな」

「ちが……」

違わない。
王子様に心配してもらえて嬉しかった。

「俺とあいつ、両方手玉にとってさぞ楽しいだろうよ」

「そんなこと、ない……」

立川さんにはそんな感情などない。

ただの理想。
ただの憧れ。