ガラガラピシャンと玄関の戸が開いて閉まった音がして、そーっと部屋の外をうかがう。

……いない、よね。

部屋を出るとあれだけ廊下に積んであった本や物が完全に撤去されていた。
これならもう二度と、閉じ込められるなんてことは起きそうもない。

茶の間のゴミも全部まとめてあった。
廊下にあった本はまとめて一カ所に積んである。
心なしか棚に飾ってある写真の祖母が、いつもより嬉しそうに笑って見えた。

「お祖母ちゃんだってゴミ屋敷は嫌だったよね」

この家は二十歳のとき、亡くなった祖母から譲り受けた。

祖父が病気で亡くなり、ようやく四十九日が済んだかと思ったら、あとを追うように祖母も亡くなった。
祖母にとって祖父は王子様で、死ぬまでずっと祖父を名前で呼んでいたほどだ。
そういう関係は本当にうらやましくて、私の憧れだったのだけど。

祖母が死んで、父はこの家を壊して更地にして売りに出すと言いだした。