自分に――全く自信がないから。

人付き合いが苦手でほぼひきこもり、やっていることといえば家で一日、小説を書いている。
しかも、自分では誇りにすら思っているが、世間の評価は女性向けエロ小説。
そのうえ家事は誰かに頼まなければ、崩れてきた物で部屋に閉じ込められるレベル。

そんな女が好きなんて男がいるのだろうか。

いや、いない。
断じていない。

大事なことなので二度言いました。

なのに松岡くんは私が可愛い、可愛いと可愛がってくる。
あれがそもそも、理解できない。

――いや、男に、それも銀縁眼鏡で執事服が似合うような男にそんなことを言われると嬉しいけど。

たまに、あれは私をからかって楽しんでいるだけなんじゃないかとか思ったりもする。
けれどあれだけ私を心配する彼が、まさか演技をしているなんて思えない。

本当はわかっているのだ、松岡くんが本気で私を好きだって。
でも自信のない私は信じ切ることができない。
どこかで疑っていないと、心の均等が保てない。

きっと、あと一歩。

なにか、自信に繋がるようなことがあれば、素直に松岡くんが好きだと認めることができる。

仕事部屋に戻り、デジタルメモを立ち上げる。
書くのは例の小説。
きっと、この小説が書き上がり、世間からそれなりの評価を受けたならば。

 ――私は素直になれる。