「じゃあ、おやすみ、紅夏」

「おやすみ」

私の頬に口付けし、がらがらと玄関を開ける。
けれどなにかを思い出したかのように勢いよく振り返った。

「あ、一応、立川の奴にも連絡しとけよ」

「わかった」

わざわざ一歩戻ってきて、また私の頬に松岡くんは口付けした。
離れるときはなぜか、わざとのようにゆっくりと。

「……ほんとは。
帰りたくない」

「……うん」

「心配なのもあるけど、ずっと紅夏と一緒にいたい」

「えっ、あっ」

つま先から熱い血流が新幹線になってあたまのてっぺんまで登ってくる。

「じゃあ、紅夏。
月曜日」