床から本を拾い上げ、松岡くんがページをめくるたび、ペリ、ペリ、と乾いた音がする。
それもそうだろう、多くのページが血塗られていたから。

「……怖い」

膝を抱いて椅子の上で丸くなる。
犯人はなにを考えてこんなことをしているのだろう。
私が怯えているの想像して楽しんでいるのだろうか。

「俺が絶対に、紅夏へ手を出させねーから」

目のあった松岡くんが、力強く頷いた。
それだけでなぜか、泣きたくなる。

「う、うん。
頼んだ」

涙が出てきて膝の中に顔をうずめた。
泣いている私の髪を、松岡くんが撫でてくれる。

「絶対に俺が、守るから。
だから、安心していい」

「うん、うん」

きっと、彼にできることはほとんどない。
それでも、そう言ってくれることが嬉しくてたまらなかった。