だから動けないのだと、最初の態度からは信じられないほど申し訳なさそうに彼は詫びていた。

「でも、ほら、パトロールするときは気にかけてもらえるようにするって言ってくれたし。
それになにかあったときはすぐに連絡くださいって」

少しでも明るく笑ってみる。
進展がなかったなんて思いたくない。
僅かでもいい、いい方向に進んでほしい。

「そうだな。
俺も帰るとき、紅夏の家の前を通って帰るようにする」

「わざわざそんなことする必要ないよ!」

「お、れ、が。
心配なの」

「いったー」

驚いて見上げたら、デコピンされた。
ずきずきと痛む額を手で押さえる。
松岡くんはおかしそうにくすくすと笑っていた。

「紅夏には言ってなかったけど、俺んち、ここから結構近いの。
カフェの行き帰り、ちょっとだけ遠回りしたら、ここ、寄れるから。
だから問題ない」