それを見ながら警察署をあとにした。

「ごめんな、俺が警察を勧めたばっかりに紅夏に嫌な思いをさせて」

「別にいいよ」

甘えるように松岡くんへぴったりとくっつく。
すぐに松岡くんは私の腰を抱いてくれた。

「だって私が怒るより先に、松岡くんが怒ってくれたし。
嬉しかった。
ありがとう」

見上げると眼鏡越しに目があった。
一瞬、驚いたように目を大きく開いた彼だったけれど、すぐにちゅっと額に口付けを落としてくる。

「けどさ、結局相談したところで、なにも変わらなかったし」

「……そう、だね」

横井さんは松岡くんに恐れおののいて話はちゃんと聞いてくれたものの、結論としてはなにもできないと言われた。

どこの誰がやっているのかもわからない。
それに実際、なにか被害が出ているわけでもない。