もし頼る人が誰もいなかったらきっと、パニックになっていただろう。

「お預かりした手紙、社の人間にも見せたんですが、やはり例の嫌がらせ犯と同一人物だろうということでした。
警察にも届けたんですが、手がかりがないようで……」

どこにでもある紙、どこにでもある封筒。
家庭用プリンタだって、一般的に広く普及している。
そして一般的なMS明朝の文字。
そんな目立った特徴のないものたちから人物を特定するなんて、砂浜の中から一粒の極小ビーズを見つけだすほど難しいだろう。

「そうですか……」

はぁーっと思わず、ため息が漏れる。

「そんな落ち込んだ顔、しないでください!
いや、これで元気を出せっていう方が難しいのはわかっているんですが……」

がっくりと肩を落とした立川さんの口からも、はぁーっとため息が落ちた。

「とにかくいま、犯人を見つけだそうと皆、躍起になっています。
社内では奨金も出たほどです。
遠からず、捕まりますよ」