「ふにゃぁ」

おいしいものを食べてついつい、気が緩む。
が、くすりと小さく耳に届いた笑い声で、瞬時に背筋がしゃんと伸びた。

「ご満足いただけましたでしょうか」

「ま、まあまあ」

不覚にも気の抜けた姿を見せてしまうなんて。
精一杯、虚勢を張ってみたもののバレバレな気がする。

――なぜなら一瞬、意地悪く松岡さんの右の口端が僅かに持ち上がっていた気がするから。



お茶の後はまた、仕事部屋に籠もっていた。
籠もっているからといって、仕事は全くしていなかったが。

だって、家に知らない人、しかも男がいるんだよ!?
集中できるわけがない。

「ゆくゆくはこの部屋も片付けてもらわないといけないわけだけど……」