松岡さんが指を揃えた手で、眼鏡の右端を押さえるようにくいっと上げる。
そういうのはますますできる執事っぽい。

――が。
和室、ちゃぶ台、正座する執事服の男は違和感でしかない。

「よろしければこっちらもどうぞ」

「あ、ありがとうございます……」

お皿にのせたクッキーを差し出された。
おそるおそる手を伸ばし、クッキーを口に入れる。

「……!」

クッキーは口の中に入れた途端、ほろほろと崩れていった。
しかもバターのいい香りがする。
はっきり言って、いままで食べてきたどんなクッキーよりも、おいしい。

「お茶のおかわりはいかがですか?」

「……お願いします」

クッキーを食べた後の紅茶は、クッキーの脂分と甘さを洗い流し、爽やかに整えてくれる。
もう、紅茶クッキー紅茶クッキーで永遠に食べていられそう。