彼の手には割れた中で大きかったであろう破片がふたつ。

「いいよ、別に。
セバスチャンが割るのかもしれないのがわかっているのに、置いといた私も悪いんだし」

それに、それは別になんのこだわりもないグラスだから、割れても問題ないし。

「本当にすみません」

しょぼんと肩を落としてしまった松岡執事が可愛く見える。
そもそも割ったのはセバスチャンで、松岡くんが気に病むことはないと思うんだけど?

「ほら、気にしないで。
それよりも片付けは済んだ?
セバスチャンが踏んで怪我をする方が大変だよ」

「はい、もう済ませてあります。
……本当にすみません、代わりのグラスを……」

まだ詫び続ける彼にはぁっと小さくため息が出た。

「だ、か、ら。
セバスチャンの飼い主は私だよ?
なんで松岡くんがお詫びしないといけないの?
セバスチャンに怪我がないならそれでいい!」