「どうぞ」

いつもごはんを食べる場所として確保している、ちゃぶ台の唯一の隙間で松岡さんがお茶を淹れてくれる。
イギリス製のイチゴ柄のティーセットはいつぞや、こんなのでお茶するなんて優雅だわー、それに経費で落ちるし、なーんて感じで買った記憶がある。
もちろん、買ってから一度も使ったことがない。

「……ありがとうございます」

カップに口をつけると、いい匂いがした。
たぶん、ダージリン。

……ん?

ダージリンはいいが、こんな酷い我が家にお茶っ葉などあろうはずがない。
いや、たとえあったとしても、こんな感じで買ったまま放置、で香りなんてすでに飛んでいるはず。

「この紅茶、どうしたんですか?」

「ああ、初めてのお宅にお伺いするときは持参するようにしております」

「……そうですか」