「……いっ」

「……マーキング」

松岡くんの指が、噛まれてじんじん痛む箇所を撫でる。

「ちゃんと印つけとかないと、取られたら困るからな」

右頬だけを歪めて松岡くんがにやりと笑った。
同時に腰が抜けたかのようにその場へすとんと座り込む。

「おやすみ、紅夏」

ちゅっと頬に口付けして、松岡くんは帰っていった。

……マ、マーキングとかって、いきなり噛みつくってなに……!?

いまさらパニックになったところで、彼はもういない。



「うっ」

翌日、起きて顔を洗おうと鏡を見て、声が詰まる。
首筋にはくっきりと、松岡くんが噛みついた痕がついていたから。