「ご、ごめん」

熱を持つ顔は上げられない。
膝の上できつく握った拳も真っ赤になっていた。

「……そういうところも可愛いんだけどな」

あたまを軽く、ぽんぽんされて顔を上げる。
レンズ越しに目のあった松岡くんは、唇の右端だけを僅かに持ち上げた。

「それで」

くいっと松岡くんの上げた眼鏡のレンズが、冷たく光る。
おかげで少し、冷静になった。

「これで終わったと思いたいですが、一応、……立川様にご相談を」

〝立川〟、そう言うとき、松岡くんは心底嫌そうな顔をした。
そこまで嫌わなくたって……とか思うのは、私が恋愛初心者だからですか?

「うん、わかった」

神妙に頷いてみせながらも私は、もう終わったんだからいいんじゃないかな、なんて軽く考えていた。