「だと、いいんですが……」

まだ松岡くんは心配そうだけど、とにかく今日はないという事実が私の気持ちを一気に軽くする。

「よかったー!」

「……!」

一瞬、松岡くんが変な声を出した気がするけど……。
なんだろう?

「……紅夏」

「ん?」

上機嫌で松岡くんを見上げる。
彼はなぜか、完全に困惑した顔で私を見ていた。

「……そろそろ離していただけませんか」

「あー、……うん」

そろそろと、彼の背中に回していた自分の手を元に戻す。
全身を巡る血液がマグマにでもなったかのように、身体が熱い。

「人にいきなり抱きつくなど、はしたないご主人様ですね」