「どうも……しない、です」

松岡さんは何事もなかったかのようにお茶を淹れていたが、……ここはついさっきまで、到底人が踏み込める領域ではなかったはずなのだ。

ゴミを行政指定のゴミ袋に詰めるのすらめんどくさく、コンビニの袋に入れただけでいくつも放置していた。
たまに編集さんと食事に行って、気持ちよく酔った帰りに意味不明に買った食べ物は冷蔵に入れっぱなしで、この前開けたのはいつかなんて覚えていない。

特にあれが出てからはここが発生源だとばかりにゴミを置くとき以外、閉め切っていた。

とにかく台所は完全にゴミ部屋で、私にとって一番ヤバい部屋、なのだ。

「どちらにお持ちいたしましょうか」

「あ、じゃあ、茶の間で……」

よくぞあの短時間で、って感心するくらい、ゴミは綺麗に行政指定のゴミ袋に詰めてまとめられている。
久しぶりに台所の床を見た。
うちにも流しとコンロがあったんだって、なぜか知っているはずなのに感動した。