彼の肩に手をのせ、その頬にそっと……口付けした。

「……ありがとう。
嬉しかった」

我ながら大胆な行動に、松岡くんの顔を見られない。
俯いた視界に見える自分の手は、指先まできれいに赤く染まっていた。

「……可愛い」

ぼそりと呟かれ、顔を上げる。
松岡くんは口もとを手で隠して、ぷるぷる震えていた。

「可愛い、紅夏」

今度は彼の手が私の肩にのり、ゆっくりと傾きながら顔が近づいてくる。
その後の展開に気づき、怖くなって目を閉じた……。

――ちゅっ。

彼の唇が触れて離れる。
おそるおそるまぶたを開けると、おかしそうに笑っている松岡くんの顔が見えた。

「ばーか。
唇にでもすると思ったか」