松岡くんを雇う前は、散らかりすぎて部屋に閉じ込められていたくらいだ。

「でもなんか、そういうところも可愛いんだけどな」

後ろから顔を回して、頬にちゅっ。

どうでもいいがこの体勢はいったい、なんなんだろう?
後ろから私を抱きしめて一緒にこたつに入るとかさ。
あんまり密着しているから、こう、……落ち着かない。

「紅夏ってほんと、可愛いよな。
あ、顔とかそういう話じゃないぞ?
いや、顔も可愛いんだけど」

可愛い、なんて言われ慣れていない私は、どうしていいのか戸惑ってしまう。
だいたい、年上のひきこもりで、少し前まで完全に干物女だった私を捕まえて可愛いとか。

「ま、松岡くん?」

「ん?」

振り向くと、レンズ越しに目があった。
目を細めて眩しそうに笑う顔は本当に幸せそうで、私の心臓がおかしくなる。